未登記建物とは?放置するデメリットや登記手続き、かかる費用などを解説

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未登記建物とは?

未登記建物とは登記されていない建物や家屋のことをいいます。建物や家屋は、新築したり、増築した場合には登記が義務付けられています。しかし、様々な事情で登記をしていない建物や家屋が一定数存在します。それらの建物や家屋を未登記建物と呼びます。

登記は法律上の義務ですが、実際に手続きを行うのは建物の所有者自身であり、建物が建ったら自動的に登記されるわけではありません。

なぜ未登記建物が生じているのか

現在において、建物や家屋を新築したり、増築する場合は登記が義務付けられており、この登記があることで住宅ローンなどの融資を受けることが一般的になっています。金融機関が融資をする場合には、必ず抵当権を設定しますが、抵当権の設定には登記が必要になります。そのため、未登記建物が生じる可能性が低いわけです。

逆に未登記建物の多くは、昭和以前に新築や増築されたものが多いとされています。当時は現金一括払いで、建物や家屋の新築などを行うケースから登記をする必要性が低かったため、そのまま未登記建物になってしまったケースも多々あります。

未登記建物の登記義務と罰則

登記には、大きく分けて「表題登記」と「権利登記」があります。表題登記は建物などの構造や床面積などハード面について、権利登記は所有権や抵当権などの権利についての登記を指しており、法律によって義務化されているのは表題登記になります。

表題登記は、不動産登記法第47条に基づき、建物の新築や増築後の1か月以内に行うことが義務付けられています。この義務を怠った場合、最大10万円以下の過料が科されることがあります。実際に過料が請求されるケースは稀ですが、万が一のリスクがあることを念頭に置いておくことが重要です。

未登記建物と固定資産税・都市計画税

建物が未登記であれば、固定資産税や都市計画税はないとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。残念なことに、未登記建物であっても固定資産税や都市計画税は徴収されます

固定資産税や都市計画税は、各市区町村や都税事務所が管轄しており、各自治体は航空写真や現地調査などで、不動産の状況を丹念に調査しています。そのため、未登記建物であっても、調査結果をもとにして固定資産税や都市計画税を課税してきます。

建物が未登記かどうかを確認する方法

未登記建物かどうかを確認する方法としては、以下の書類で確認することができます。

  • 不動産全部情報証明書
  • 固定資産税・都市計画税納税通知書
  • 納税通知書に同封されている課税明細書
  • 名寄帳
  • 固定資産評価証明書
  • 公課証明書

法務局に該当物件の不動産全部情報証明書の請求をした場合、未登記建物であれば、不動産全部情報証明書を取得することはできません。また、各市区町村や都税事務所から毎年送られてくる固定資産税・都市計画税納税通知書を確認する方法もあります。同書に未登記と記載されていれば、未登記建物の可能性が高くなります。

納税通知書に同封されている課税明細書に家屋番号が記載されていない場合、未登記建物の可能性があります。なお、名寄帳や固定資産評価証明書、公課証明書からも同様に確認することができます。名寄帳らの書類は各市区町村や都税事務所から取得可能です。必要に応じて取り寄せましょう。

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未登記建物を登記しないデメリット

未登記建物は、様々なデメリットやリスクが生じてきます。「知らない」だけでは済まされない、未登記建物の内容やデメリットなどを紹介していきます。

  • 固定資産税が高くなる場合がある
  • 住宅ローンが組みにくくなる
  • 売却が難航する
  • 相続手続きの複雑化
  • 底地所有者に対抗ができない

固定資産税が高くなる

未登記建物が建っている土地が小規模住宅用地であれば、固定資産税は最大6分の1、都市計画税では最大3分の1の税の軽減措置がとられています。しかし、未登記建物の場合は軽減措置は適用されないため、軽減措置適用と比較して固定資産税なら6倍、都市計画税なら3倍の税金を支払うことになります。

住宅ローンが組みにくくなる

建物や家屋を新築したり、増築する場合は金融機関から融資を受け、住宅ローンを組むのが一般的です。建物が登記されている場合には問題になりませんが、未登記の建物には支障が生じます。未登記建物は所有権や抵当権などが設定されていないため、金融機関から担保物件にならないと判断され、住宅ローンの融資を実行してくれる金融機関は皆無となるでしょう。

売却が難航する

未登記建物は、売却にも難航するケースが多いです。前述の理由から住宅ローンが組めないとなると、現金一括払いができる買い手を探すしかありません。不動産の価格は何千万、時には億単位の場合も考えられます。そんな大金をすぐに用意できる方はごく少数でしょう。もし、売却が承認される場合でも「登記できていない建物=不備がある不動産」とみなされ、少額で買いたたかれるケースも見られます。

相続手続きの複雑化

未登記建物に相続が生じた場合には、必然的に登記手続きが複雑になる傾向にあります。相続人が未登記建物の表題登記や所有権保存登記などを行う必要があり、手続きが増えることで、登記費用などの負担も大きくなるでしょう。また、後述する表題登記の手続きで必要な建物図面や建築確認済証が紛失してしまうケースも珍しくありません。その場合は、土地家屋調査士への相談が必要になります。

底地所有者に対抗ができない

対抗とは「自分の権利を主張する」ことだとお考えください。建物や土地など不動産の対抗要件は法律上、登記になります。不動産の登記をしていなければ、自分以外の第三者にその不動産が自分のものだと主張できません。

借地に自己所有の建物が建っている場合も、考え方は一緒です。借地借家法上、借地権の対抗要件は建物の登記です。未登記建物だとすると、底地所有者に借地権を主張することができません

そればかりか、底地所有者が底地を売却してしまったら、買主にも借地権を主張できなくなります。買主から建物から出て行けと言われたり、最悪、建物を取り壊せと言われたりしても権利を主張できなくなってしまうということです。

未登記建物の登記手続き

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未登記建物を登記する場合、大きく「表題登記」と「権利登記」の2種類の登記が必要です。登記の順番としては、表題登記を行ったあとに権利登記を行います。

登記手続きの申請先

申請先は表題登記・権利登記とも未登記建物の所在地を管轄する法務局になり、申請できる人は原則未登記建物の所有者になります。なお、手続きを委任する場合、申請できる人は表題登記・権利登記それぞれ異なります。表題登記の場合は土地家屋調査士となり、権利登記は司法書士が請け負うことが一般的です。もし、手続きを各専門家に依頼する場合は注意しましょう。

表題登記・権利登記の申請で必要な書類一覧

表題登記と権利登記の申請にあたり、必要な書類を解説します。表題登記では、建物の情報が分かる書類や申請者に関する書類が必要です。一方、権利登記では申請者に関する書類のみが求められます。

表題登記の必要書類一覧

  • 申請書
  • 印鑑登録証明書
  • 申請人の住民票
  • 戸籍謄本などの相続関係書面(申請人が相続人の場合)
  • 固定資産税の物納証明書
  • 委任状(登記申請を委任した場合)
  • 建物図面・各階平面図
  • 建築確認書および検査済書
  • 建築代金の領収書
  • 施工業者からの引き渡し証明書

権利登記の必要書類一覧

  • 申請書
  • 申請人の住民票
  • 戸籍謄本などの相続関係書面(申請人が相続人の場合)
  • 委任状(登記申請を委任した場合)

    未登記建物を取り壊す場合

    未登記建物をすでに取り壊していた、もしくは取り壊す予定の場合もあるかと思います。その際は滅失登記は必要ありません。滅失登記とは、元々表題登記をしていた建物を取り壊した際に必要な登記です。最初から未登記である以上、滅失登記も必要ありません。

    ただし、各自治体へ家屋滅失届を提出した方がいいでしょう。各自治体は、家屋滅失届の提出がなければ固定資産税や都市計画税を課税し続ける可能性があるからです。

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    登記申請時に必要な費用

    未登記建物の登記申請時に必要な費用には、土地家屋調査士や司法書士の報酬、登録免許税などがあります。

    土地家屋調査士や司法書士の報酬

    司法書士や土地家屋調査士に登記申請を委任する場合は、それぞれ報酬が発生します。現在、土地家屋調査士にしろ、司法書士にしろ報酬は自由化されています。標準報酬などの決まった金額はありません。

    しかし、おおむね土地家屋調査士が8~12万円司法書士が2~3万円が相場です。なお、土地家屋調査士や司法書士に委任せず、ご自身で申請をすれば当然、各専門家への報酬は発生しないことになります。

    登録免許税

    登記申請する場合、国に決められた税金を納めなければいけません。表題登記は非課税ですが、権利登記には登録免許税が発生します。

    課税価格に所定の税率を乗じて登録免許税を算出します。課税価格は、固定資産評価証明書に記載された評価額となり、権利登記の税率は0.4%です。例えば、評価額が1000万円だった建物の場合は登録免許税は4万円となります。

    登録免許税の軽減方法

    すべてのケースではないですが、一定の条件にあてはまれば登録免許税の税率が0.4%から0.15%に軽減されるケースがあります。一定の条件とは、次のとおりです。

    • 登記申請時に住宅用家屋証明書を提出する
    • 未登記建物が、個人が自己居住のために取得した
    • 住宅面積が家屋全体の90%を超える
    • 新築後または取得後1年以内に登記を受ける
    • 床面積が登記簿上50㎡以上であること
    • 耐火建築物、準耐火建築物、低層集合住宅のいずれかに該当する(マンションの場合)

    なお、この軽減措置は期限があり令和9年3月31日までとなっています。軽減を考えている場合は、期間内に申請するようにしましょう。

    未登記建物でお困りなら司法書士へお任せください!

    未登記建物を登記しないと、固定資産税などの税金や売却などでデメリットがあります。不要なデメリットを避ける意味でも、お早目の登記をお勧めします。しかし、登記申請は細かな手続きが多く厄介になりがちです。そこから、登記の補正(修正)があった場合の法務局とのやり取りも労力を要します。未登記建物の登記でお困りの時は、ぜひ当事務所へご相談ください。

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    記事の監修者

    司法書士法人わかば 境 光夫

    司法書士法人わかば
    代表司法書士 境 光夫

    昭和35年2月9日東京都杉並区生まれ。専修大学法学部卒業。
    平成24年に司法書士試験に合格。その後、司法書士事務所(法人)にて登記業務や債務整理業務を取り扱う。
    司法書士法人わかばを立ち上げ、相続登記(不動産の名義変更)を中心に業務を行う。

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