【ひな形あり】相続登記で委任状が必要になる場合や作成時の注意点などを解説

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相続登記の委任状とは

亡くなった方が土地や建物などの不動産を所有していた場合、不動産の登記名義を配偶者や子供などの相続人に変更する手続きが必要になります。それらの手続きを相続登記といいます。この相続登記を相続人以外の第三者に手続きを依頼するには、委任状が必要になります。

この委任状とは不動産の登記名義を相続人から第三者に委任するための書類です。この委任状により、相続に関係ない親族や司法書士、弁護士などに登記申請の代理を依頼できます。なお、委任状は法務局に提出するため、正確な作成が求められます。

業務としての手続き代行できるのは司法書士と弁護士のみ

相続人が自身以外の第三者に代理権を与えて、登記申請を委任することは可能ですが、報酬を得て登記申請の代理人になることは司法書士や弁護士のみとされています。

これらに属さない人物が委任された相続登記を行う場合は無報酬が条件となり、違反した場合は1年以下の懲役、または100万円以下の罰金に処されます。もし、親族などに相続登記の手続きを依頼する場合は無報酬となる点を留意する必要があります。

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委任状が必要になるケース

不動産を相続する相続人以外が相続登記手続きをする場合は、委任状が必要になります。委任状が必要な具体例としては、以下が考えられます。

  • 司法書士や弁護士が手続きを行う
  • 相続とは関係のない親族が手続きを行う
  • 相続人代表者が手続きを行う

司法書士や弁護士が手続きを行う

法律上、司法書士および弁護士に限り、業務として登記業務を代理することが認められています。この場合の委任状は士業側が用意しているケースが多い傾向にあります。そのため、依頼する相続人側の負担は委任状への署名捺印など最小限で済みます。

相続とは関係のない親族が手続きを行う

相続人ではない親族が代理人として相続登記の手続きをする場合にも必要になります。親族間においても、準備を怠らずしっかりと用意しておきましょう。

相続人代表者が手続きを行う

原則として相続登記は相続人全員で手続きを行わなければいけません。しかし、相続人の中で手続きを行う代表者を決めたのち、この代表者を代理人として相続登記手続きを行うことは可能です。こういった場合も相続人代表者が委任を受けた証明として、委任状が必要です。

委任状が不要なケース

委任状が不要なケース_イメージ

相続人以外の者が相続登記手続きをする場合でも、委任状が不要なケースがあります。

  • 法定相続分に沿って相続人代表者が手続きを行う
  • 相続人が未成年者のため親権者が手続きを行う
  • 成年後見人が代理人として手続きを行う
  • 遺言執行者が手続きを行う

法定相続分に沿って相続人代表者が手続きを行う

相続人代表者が法定相続分に従って行う場合は、委任状がなくても手続きが可能です。

ただし、注意していただきたいのが登記識別情報通知との関係です。登記識別情報通知は登記済証権利証に代わる大事な情報です。この登記識別情報通知には発行する要件があり、「申請人か登記名義人になる者」に限って発行されます。

もし、相続登記後に不動産の売却や不動産を担保に融資を検討している場合は、登記識別情報通知がないと手続きが難航します。そのため、法定相続の場合は、できるだけ相続人代表者に委任するのではなく、相続人全員で相続登記手続きをすることをお勧めします。

相続人が未成年者のため親権者が手続きを行う

相続人が未成年の場合は、親権者が代理で法律行為を行います。相続登記手続きもこれに含まれますが、この場合、親権者が法定代理人のため、委任状は不要です。ただし、相続人と親権者との関係が分かる戸籍謄本などの関係書類の提出が必要です。

成年後見人が代理人として手続きを行う

相続人が認知症などにより、成年後見開始の審判を受けた成年被後見人である場合があります。この場合は、成年後見人が相続人の代理人として相続登記手続きをすることになります。成年後見人は、相続人の法定代理人にあたるため、委任状は不要となります。ただし、相続人の成年後見人であることを証明するため、成年後見登記事項証明書が必要になります。

遺言執行者が手続きを行う

遺言書に遺言執行者が指定されている場合、その者が相続手続きを行うことが認められています。ただし、それを証明するためには、遺言執行者である旨が記載された遺言書の提出が必要です。

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【ひな形あり】相続登記の委任状の書き方

相続登記の委任状の書き方について解説します。以下に委任状のサンプルを掲載していますので、内容を確認しながら適切に作成しましょう。

委任状

 

 

(代理人)

 住所 〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇〇番

 名前 法務三郎

私は、上記の者を代理人と定め、下記事項に関する一切の事項を委任する。

・下記の登記に関し、登記申請書を作成すること及び当該登記の申請に必要な書類と共に登記申請書を管轄登記所に提出すること
・登記が完了した後に通知される登記識別情報通知書及び登記完了証を受領すること
・登記の申請に不備がある場合に、当該登記の申請を取下げ、または補正すること

・登記にかかる登録免許税の還付金を受領すること
・登記識別情報の暗号化並びに複合化に関する一切の件
・前各号につき復代理人選任の権限
・上記各号の他、下記の登記の申請に関し必要な一切の権限


以上





 

登記の目的  所有権移転
 原因    令和〇年〇〇月〇〇日相続
 相続人   (被相続人 相続太郎)〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇〇番
       相続二郎

不動産の表示

 所在    〇〇県〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇番
 地番    〇〇番

 地目    宅地

 地積    〇〇平方メートル

 

 所在    〇〇県〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇番
 家屋番号  〇〇番

 種類    居宅

 構造    木造瓦葺2階建 

 床面積   1階部分〇〇平方メートル、2階部分〇〇平方メートル


令和〇〇年〇〇月〇〇日


(委任者住所)〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇〇番
(委任者氏名)相続一郎 印

代理人の情報

代理人の住所と氏名を記載します。また、代理人の住所と氏名の下に「私は、上記の者を代理人と定め、下記事項に関する一切の事項を委任する」と必ず記載してください。

委任事項

委任事項を記載する必要があります。これらの条項がないと「提出書類の原本還付受領」や「登記識別情報通知の受領」など大切な手続きを代理することができなくなります。

登記の目的

登記の目的は、不動産が単独所有か共有かなど、その状況に応じて記入する項目が変わるため注意しましょう。今回のように相続不動産が被相続人の単独所有であった場合「所有権移転」と明記します。

登記原因

「原因 令和〇〇年〇〇月〇〇日相続」と記載します。原因日付は、相続開始日(被相続人の死亡日)です。暦年は「和暦」を用いましょう。西暦を使用するのは認められていません

相続人と申請人

被相続人の氏名を括弧書きし、相続人である相続人の住所、氏名を記載します。なお、対象の不動産が共有持分であった場合、相続人の名前の前に「持分3の1 相続二郎」というような持分を記載する必要があります。

不動産の表示

不動産の表示を不動産登記簿の記載に従って、所在や家屋番号を記載します。記載例は土地1筆、建物1棟の一戸建てを想定しています。

委任日付、委任者の住所、署名捺印

最後に委任を作成した日付、委任者の住所を記したのち、署名と捺印をします。

委任状を作成する際の注意点

委任状を作成する上で、注意しておきたい点を紹介します。いずれも相続登記を依頼する委任状としての効果を発揮するために覚えておきたいポイントになるため、円滑な手続きとするためにしっかりと理解しておくことが重要です。

委任状の住所氏名

委任状の作成はパソコンでも手書きでも構いません。しかし、可能であれば住所氏名は委任者の自署が望ましいでしょう。依頼した旨が本人了承のもとで行われたか否かを明確に示すことができ、偽造や不正行為を防ぐ効果があります。なお、委任者の住所氏名は住民票などの公的書類に従って正確に書き写しましょう。

委任状に押印する印鑑

委任状には委任者の署名横に押印が必要になります。この印鑑は実印が望ましいですが抵抗がある場合は認印でも問題ありません。しかし、印鑑は朱肉を使用するものを推奨します。シャチハタは陰影が薄いため、万が一、押印が消えてしまうと契約トラブルの原因になりかねません。

委任状が複数枚になった

委任状は1枚にまとめることが理想です。しかし、不動産の件数が多い場合は、複数枚になるケースもあります。委任状が複数枚になる場合は、ホチキスでとめ契印でつなぎます。契印に使用する印鑑は、委任状の署名横で押印した印鑑を使用しましょう。

委任状を書き間違えた際の処理

委任状の文面を間違えた場合は、間違えた文に二重線を引き、訂正印を押印します。その近くに正しい文を書きましょう。その際、あらかじめ文書の余白に押印する捨印はなるべく避けた方がいいでしょう。捨印を勝手に使用され、委任していない事項を記載されたりするなど悪用される恐れがあるからです。

白紙委任状を準備する場合

委任状を作成する手間を省くため、住所と署名捺印だけをして白紙の委任状を作成するケースがあります。この場合でも白紙の委任状を勝手に書き換えられ、悪用されるリスクがあります。どうしても事前に準備したい場合は、勝手に文章を追加されないように文章段落の間を狭くするなど工夫が必要になります。

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委任状を司法書士に依頼した場合の登記手続き

司法書士に相続登記を依頼した場合は、すべての業務を代理できると判断してよいでしょう。ここでは司法書士に相続登記を依頼した場合の手続きの流れを順に解説していきます。

司法書士が代理する業務の流れ

  • 必要書類を収集し相続人を確定する
  • 遺産分割協議を行い、遺産分割結果に基づいた遺産分割協議書を作成
  • 司法書士が作成した委任状に不動産取得者が署名捺印
  • 申請書、委任状、遺産分割協議書などの関係書類を管轄法務局に申請
  • 登記完了後、登記識別情報通知や登記完了証、原本還付書類が司法書士に返却
  • 上記書類を委任者に引き渡し委任業務完了

司法書士にかかる費用

司法書士に相続登記を委任した場合の報酬ですが、現在、司法書士報酬は自由化され、基準報酬というものが存在しません。事務所によってまちまちですが、おおよそ3万円~12万円程度になります。なお、このほかに戸籍謄本などの必要書類の収集費や遺産分割協議書の作成費がかかる場合があります。気になる場合は事前に依頼予定の司法書士へ確認しておくことをお勧めします。

相続登記を委任するなら司法書士へ

相続登記は委任状の作成から始まり、戸籍謄本の収集や遺産分割協議書の作成など、非常に多くの手続きを伴うため、想像以上の負担になることがあります。これらの手続きをすべて自力で行うのは大変ですが、司法書士に依頼すれば、専門的な知識と経験に基づき、正確かつ迅速に進めてもらえます。結果として、相続手続きにかかる負担が大幅に軽減され、安心して手続きを任せられるでしょう。

もし、相続登記でお困りのときは司法書士にご相談ください。きっと良い答えが待っているはずです。

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記事の監修者

司法書士法人わかば 境 光夫

司法書士法人わかば
代表司法書士 境 光夫

昭和35年2月9日東京都杉並区生まれ。専修大学法学部卒業。
平成24年に司法書士試験に合格。その後、司法書士事務所(法人)にて登記業務や債務整理業務を取り扱う。
司法書士法人わかばを立ち上げ、相続登記(不動産の名義変更)を中心に業務を行う。

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