相続登記をオンラインでできるの?手順や注意点、メリットをご紹介

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相続登記のオンライン申請とは

従来、登記申請の方法は、申請書類を法務局の窓口に直接提出する「窓口申請」と申請書類を法務局に郵送する「郵送申請」の2通りしかありませんでした。しかし、インターネットの普及によりパソコンや専用システムを使ったオンライン申請の方法が設けられました。

オンライン申請が導入された当時は、戸籍などの添付書類をすべてPDF化して送信しなければいけないなどの複雑な手続きが必要でしたが、現在では半ライン申請ともよばれる特例法式も認められ、オンライン申請が急速に普及してきました。

特例法式とは、添付書類のすべてをPDF化して法務局に送信しなければならなかったのを緩和した方式で、登記原因証明情報だけをPDF化して送信すればよくなりました。相続登記における登記原因証明情報とは相続関係説明図が該当します。それでは、相続登記のオンライン申請について説明していきます。

オンライン申請のメリットとデメリット

何かと便利そうに見えるオンライン申請ですが、メリットだけではなく、デメリットも存在します。きちんと把握してオンライン申請で手続きを進めるか、従来の窓口や郵送での手法をとるかを選べるようにしましょう。

オンライン申請のメリット

メリットの主な特徴は平日に時間が取れない人が感じれることが多い点です。

場所に制限がない

相続登記を窓口申請する場合には、直接、管轄法務局に出向かなければいけません。相続登記の管轄法務局は、不動産の所在地によって決められています。たとえば、東京に住む方でも、北海度札幌市にある不動産の相続登記をする場合には、札幌法務局まで行かなければならないのです。

オンライン申請は、そのような制限はありません。パソコンと専用システムさえあれば、インターネットを使って日本全国どこの法務局にも相続登記を申請できるのです。

時間に制限がない

法務局の開庁時間は、平日午前8時30分から午後5時15分までです。つまり窓口申請の場合には、この時間帯に登記申請をしなければなりません。

それに対して、オンライン申請は平日午前8時30分から午後9時まで申請することができます。(午後5時15分以降の申請は、翌開庁日扱い)昼間、仕事でお時間が取れない方は帰宅後の夜に登記申請ができるというメリットがあります。

補正の対応もオンラインで可能

相続登記申請に不備があった場合、法務局から補正を命じられることがあります。窓口申請や郵送申請は、窓口に出向くか、郵送で補正に対処しなければいけません。一方、オンライン申請は、オンラインで補正することが認められています。無駄な労力や手間が省けるというメリットがあります。

登録免許税の納付も簡便にできる

窓口申請と郵送申請の登録免許税の納付方法には、登録免許税額分の現金を銀行などの金融機関や税務署に納付する現金納付か、収入印紙による納付しか認められていません。

オンライン申請には、登録免許税の納付はこれら2つの方法のほか、オンラインを使用した納付方法も認められています。インターネットバンキングやモバイルバンキング、ATMを利用しての電子納付をすることができるのです。これもまた、忙しい現代人にとってはメリットといえるでしょう。

オンライン申請のデメリット

一方、デメリットは手続きがパソコンに依存してしまう点が挙げられます。

パソコンの操作に慣れる必要がある

オンライン申請は、パソコンや専用システムを使用するため、その操作方法に不慣れの場合には、正確な登記申請ができないというデメリットがあります。

通信障害などのトラブル

オンライン申請は、インターネットを用いることからインターネット環境にトラブルが生じた場合には、登記申請が遅れたり、最悪のケースでは登記申請自体ができないと言ったことも考えられます。また、専用システムに不具合が生じた場合にも、同様に登記申請に悪影響が出る可能性があります。

オンライン申請の事前準備

オンライン申請を行う前に事前準備が必要です。順を追って説明します。

必要書類の準備

オンライン申請でも、窓口申請と郵送申請と同様、戸籍などの書類が必要になります。以下、書類名と取得先を説明します。

書類名 取得先
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 被相続人の本籍地の市区町村役場
相続人全員の戸籍 相続人の本籍地の市区町村役場

被相続人の住民票の除票

もしくは戸籍の除附票

除票は被相続人の住所地の市区町村役場
除附票は被相続人の本籍地の市区町村役場

不動産を取得する相続人の住民票

もしくは戸籍の附票

住民票は相続人の住所地の市区町村役場
附票は相続人の本籍地の市区町村役場
固定資産評価証明書

不動産所在地の市区町村役場

(東京23区は都税事務所)

遺産分割協議書 遺産分割相続の場合:自分で作成
相続人全員の印鑑登録証明書 遺産分割相続の場合:相続人の住所地の市区町村役場
遺言書

遺言相続の場合:公正証書遺言は公証人の関与が必要

自筆証書遺言は家裁の検認が必要

スクロールできます

パソコンの用意

オンライン申請はインターネットを使用するため、パソコンが必要です。パソコンのOSはWindows10もしくはWindows11が推奨されています。なお申請総合ソフトはMacOSには対応していないため、Macからの申請はできません

マイナンバーカードの準備

添付書面の送付期限も定められています。申請日を含めて3日以内です。送付期限が過ぎてしまうと、登記申請が却下されてしまう可能性があります。3日以内の送付が無理な場合は、早めに法務局と相談をしましょう。オンライン申請では、電子署名が必要になります。市区町村役場に行き、電子証明がなされたマイナンバーカードが必要になります。

ICカードリーダライタの準備

ICカードリーダライタは、電子署名を行う際に必要です。インターネットや家電量販店で1500円から2000円ぐらいで購入できます。

相続関係説明図の作成

オンライン申請(特例法式)は、登記原因証明情報をPDF化して申請書に添付すれば、ほかの書類をPDF化しなくてもよい特例があります。相続登記の場合の登記原因証明情報は、相続関係説明図が該当します。戸籍を参照して、相続関係説明図を作成しましょう。

登記・供託オンライン申請システムのダウンロード

オンライン申請をするためには、法務省が提供している登記・供託オンライン申請システムをダウンロードします。このシステムを使い、申請書の作成、データ送付、電子署名などを行います。詳しくは下記をご参照ください。

オンライン申請の手順

ここでは、特例法式(半ライン申請)による申請の手順について説明します。

申請情報を入力する

法務省が提供している登記・供託オンライン申請システムから、登記・供託オンライン申請システムにログインします。画面に「申請書作成」ボタンが表示されるので、申請書作成ボタンを押します。そうすると、申請様式一覧が表示されます。

その中から、登記申請書(権利に関する登記)」「所有権移転(相続)【署名要】と順番に選択をします。申請情報の入力画面が表示されるので、各項目に必要事項を入力していきます。ここでの入力情報が申請内容となるので、何回も見直して正確に入力してください。

特に、不動産の表示には注意してください。よく間違える箇所です。不動産の表示を入力する方法には、オンライン物件検索を利用する方法」「直接入力する方法の2通りがあります。間違いを無くすためには、「オンライン物件検索を利用する方法」をお勧めします。

添付情報の添付と電子署名

特例法式(半ライン申請)の場合、PDF化する情報は、登記原因証明情報だけで足ります。相続登記では、登記原因証明情報は相続関係説明図です。画面のファイル添付ボタンを押します。次にPDF化した相続関係説明図を申請情報に添付します。署名付与ボタンを押して、申請情報に電子署名を付与します。

申請情報の確認と送信

申請情報への電子署名の付与が済んだら、申請前の準備は終了です。申請情報を送信する前にプレビュー表示にして、申請情報に間違いがないかの最終確認をしましょう。最終確認後、申請情報の送信先である管轄法務局を選択します。申請送信ボタンを押して、申請情報を管轄法務局に送信します。

管轄法務局で申請が受け付けられると受付確認ボタンが表示されます。受付確認ボタンを押すと、受付のお知らせが表示されます。受付のお知らせは、受領証に相当するものです。受付のお知らせには、受付年月日、受付番号、申請情報の内容が記載されています。受付年月日と受付番号は、登記申請を特定するために重要なものとなりますので、できればプリントして保管しておいたほうがいいでしょう。

登録免許税を納付する

登録免許税の納付方法は、以下の3通りです。

  1. 現金納付
  2. 収入印紙納付
  3. 電子納付

オンライン申請では、1から3までのいずれの納付方法を用いることができますが、窓口申請と郵送申請では現金納付と収入印紙納付しかできません。ご注意ください。

現金納付

登録免許税額分の現金を銀行などの金融機関や税務署に納付して、領収証書を受領します。領収証書を登録免許税納付用紙に貼付します。登録免許税用紙は、登記・供託オンラインシステムからプリントすることができます。収証書貼付済みの登録免許税納付用紙は、法務局に提出します。

収入印紙納付

登録免許税額分の収入印紙を購入します。登録免許税納付用紙に収入印紙を貼付して、法務局に提出します。

電子納付

電子納付を行う場合は、登記・供託オンラインシステムの納付ボタンを押して納付します。インターネットバンキングなどを使って納付することになります。注意していただきたいのは、電子納付の場合、申請した日を含めて2日以内に納付しなければいけないということです。2日以内に納付処理が終了していない場合には、申請の却下がなされる可能性があります。

添付書面の送付

申請情報をデータ送信した後は、申請日を含めて3日以内に「添付書面」を管轄法務局に提出しなければいけません。それらの手順について説明します。登記・供託オンラインシステムから書面により提出した書面の内訳書を印刷します。書面により提出した書面の内訳書の押印欄に押印をします。

相続関係説明図や戸籍などの必要書類を用意します。登録免許税を現金納付する場合や収入印紙納付する場合は、登録免許税納付用紙も用意します。書面により提出した書面の内訳書を表紙にして各書面をホチキスなどで留めます。

原本還付する書面があるときは、原本還付の手続きを取ってください。登記識別情報通知、登記完了証、原本還付書類を郵送で返却することを希望できます。その場合には、郵便切手貼付済の封筒かレターパックプラスを同封してください。郵便記録が追跡できることを考えると、レターパックプラスがいいかと思います。添付書面の提出は、窓口でも郵送でも構いません。申請日を含めて3日以内に提出をしましょう。

登記の完了を確認する

登記が完了するまで通常は、1週間から2週間かかります。登記完了予定日は、法務局のホームページから確認することができます。オンライン申請の場合は、登記が完了すると登記・供託オンラインシステムに手続き終了と表示されます。

添付書面の送付期限も定められています。申請日を含めて3日以内です。送付期限が過ぎてしまうと、登記申請が却下されてしまう可能性があります。3日以内の送付が無理な場合は、早めに法務局と相談をしましょう。

登記識別情報通知や登記完了証の受領

登記が完了すると、登記識別情報通知、登記完了証、原本還付書類を受領することになります。法務局窓口での受領でも郵送受領のどちらでも構いません。郵送受領を希望する場合は、添付書面の送付時にレターパックプラスなどの返送用封筒を同封してください。

登記識別情報は権利証に代わるもので、11桁から13桁のアルファベットや数字を羅列したものです。オンライン申請の場合は、登記識別情報をデータか書面で受け取れることができます。しかし、できれば書面での受領をお勧めします。

登記識別情報は、その不動産の所有者が誰かを証明する大切な情報です。登記識別情報をデータで受領した場合には、パソコンの不具合でデータが消失してしまうおそれもあるからです。

オンライン申請の注意点

オンライン申請の手続きにおいて注意すべき点を解説します。以下の点もしっかり押さえて円滑に手続きを進められるようにしましょう。

登録免許税の納付期限

オンライン申請では、登録免許税の納付期限が定められています。申請日を含めて2日以内です。納付期限を過ぎても納付がない場合は、登記申請が却下されるおそれがあります。ご注意ください。

補正期限

申請内容に不備がある場合、申請システムを通じて法務局から補正のお知らせが届きます。補正のお知らせには、補正期限も表示されています。期限までに補正をしないと。登記申請が却下されてしまうこともありえます。期限を過ぎてしまうおそれがある場合は、法務局と相談をしてください。

スマホから申請できない

オンライン申請は、スマホから申請する事はできません。パソコンでしか対応できないのです。この点もご注意ください。

司法書士にお任せすれば手続き作業が不要に

オンライン申請は、パソコンがあれば日本全国どこからでも申請ができます。申請できる時間も午前8時30分から午後9時までと、便利な申請方法です。うまく活用すれば、メリットが大きい手続きです。

反面、パソコン操作が不得手な方や、相続関係が複雑な場合には難しい申請方法になるかと思います。相続登記は、相続関係や不動産の調査など予期せぬ問題が出てくることもあり得ます。何かお困りのときは、司法書士にご相談下さい。

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記事の監修者

司法書士法人わかば 境 光夫

司法書士法人わかば
代表司法書士 境 光夫

昭和35年2月9日東京都杉並区生まれ。専修大学法学部卒業。
平成24年に司法書士試験に合格。その後、司法書士事務所(法人)にて登記業務や債務整理業務を取り扱う。
司法書士法人わかばを立ち上げ、相続登記(不動産の名義変更)を中心に業務を行う。

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