登録免許税とは?
被相続人が所有していた不動産を相続登記することは理解したが、「相続登記には登録免許税という税金を国に納める必要がある」と聞いて驚いた方も多いかもしれません。
そもそも登録免許税とは、登録免許税法により、不動産・船舶・航空機・会社などの法人、人の資格などについて、登記・登録・特許・免許・認可・認定・指定・および技能証明について課税される税金を指します。
これは、令和6年4月1日からの不動産登記法の改正により、手続きが義務化された不動産の相続登記も対象になります。「相続開始日」、もしくは「相続の開始を知った日」の、いずれか遅い日から3年以内に相続登記をしなければ10万円以下の過料に処される可能性が生じたのです。
なお、一定の条件を満たした不動産に対して、登録免許税が免除される制度も施行されています。こちらについては後述で解説していきます。
相続登記における登録免許税の計算方法
相続登記の登録免許税は、次の手順に従って計算します。
- 課税価格の確認
- 登録免許税の税率
課税価格の確認
登録免許税を計算するためには、課税価格を調べなくてはいけません。この課税価格は「固定資産課税明細書」もしくは「固定資産評価証明書」で確認できます。
固定資産課税明細書は毎年4月から6月に、地方自治体(東京23区は都税事務所)から送付される納付通知書に同封されており、評価額または価格と記された金額が記載されています。この金額が登録免許税の課税価格となります。もし、固定資産課税明細書が見当たらない場合、固定資産評価証明書を地方自治体で取得することで、課税価格を確認することができます。
登録免許税の税率
相続登記の基本的な税率は0.4%です。固定資産課税明細書や固定資産評価証明書で調べた課税価格に0.4%を乗じた額が登録免許税となります。ただし、遺贈登記では受遺者が相続人以外の場合に限り、税率が2%となるので注意しましょう。
計算時の注意点
登録免許税を計算するにあたって、覚えておきたい注意点について解説します。
- 課税価格と登録免許税額の端数切り捨て
- 課税価格の合算
- 固定資産税が非課税の場合の取り扱い
課税価格と登録免許税額の端数切り捨て
課税価格の計算では、不動産の評価額や価格に1000円未満の端数がある場合、それを切り捨てます。同様に登録免許税を計算した際に、100円未満の端数がある場合も切り捨てます。例えば、不動産の評価額が1123万9234円の場合、以下のような金額になります。
- 課税価格:1123万9000円(1123万9234円の1000円未満を切り捨て)
- 登録免許税:4万4900円(1123万9000円に税率0.4%を掛けて、100円未満を切り捨て)
課税価格の合算
土地や建物などの不動産を複数所持している場合、不動産ごとに登記申請することは可能です。課税価格も不動産ごとに算出しますが、不動産の管轄法務局が同じならば、複数の不動産を一括して申請することもできます。その場合は、不動産の評価額を合算した額が課税価格となります。
固定資産税が非課税の場合の取り扱い
土地の地目が私道や公衆用道路などの場合、固定資産税や都市計画税が非課税となるケースがあります。注意点としては、固定資産税や都市計画税は非課税であっても、登録免許税は非課税にはならないということです。登録免許税の計算においては、1㎡の近傍宅地価格に私道などの面積を掛けた30%が課税価格となります。
登録免許税の計算例
登録免許税を正確に把握するために、具体的な計算例を用いて解説します。課税価格の出し方などを確認しましょう。
- 戸建て(土地と建物)を相続
- マンションを相続
- 不動産の一部分を相続
戸建て(土地と建物)を相続
戸建てが相続対象となった場合は土地と建物のみを考えます。例えば、土地の評価額が1523万1476円、建物の評価額が1043万4445円であった場合、まずこの2つの評価額を合算し「2566万5921円」となります。ここから1000円未満の端数を切り捨てた額である、「2566万5000円」が課税価格です。
この課税価格「2566万5000円」に相続登記の税率0.4%を適用させると、「10万2660円」となるので、ここから100円未満を切り捨てた「10万2600円」が登録免許税となります。
マンションを相続
マンションも同様に固定資産課税明細書や固定資産評価証明書で、評価額を調べますが、マンションでは専有部分と敷地権に分かれており、敷地権は建物ごとに割合が決められています。
例えば、敷地権全体の評価額が11億5275万443円で、敷地権割合が1万分の256だった場合、11億5275万443円を1万分の256で割った「2951万51円」が敷地権の評価額となります。また、専有部分の評価額は「1255万1667円」だったとします。
この敷地権の評価額「2951万51円」と専有部分の評価額「1255万1667円」を足すと、「4206万1718円」となります。ここから1000円未満の端数を切り捨てた額である「4206万1000円」が課税価格です。
課税価格「4206万1000円」に相続登記の税率0.4%を掛けた金額から、100円未満を切り捨てると登録免許税は「16万8200円」となります。
不動産の一部分を相続
共有不動産(土地)の共有者の1人が被相続人となった場合を考えてみましょう。例えば、この土地の共有者は3名で各3分の1ずつ共有していたとします。
土地全体の評価額「1256万7443円」であった場合は、3分の1の「418万9147円」が評価額となります。1000円未満の端数を切り捨てた「418万9000円」が課税価格となり、ここから登録免許税の税率0.4%を乗じた額、「1万6756円」を算出します。最後に100円未満を切り捨てれば、登録免許税は「1万6700円」となります。
納付方法
登録免許税の納付方法は、3種類があります。
- 現金納付
- 収入印紙納付
- オンライン納付
現金納付
登録免許税自体を直接、法務局に納付することはできません。現金納付の場合は以下の手順を踏みましょう。
- 金融機関や税務署で登録免許税納付書を取得
- 現金納付後、領収書を発行
- 登記申請の際、法務局に領収書を提出
現金納付の特長は、金融機関や税務署に直接現金で納付するため、手続きの不備が起こりにくいです。納付できる金額に上限はありませんが、登記申請と同時に納付を行う必要があります。
収入印紙納付
登録免許税の金額が3万円以下の場合には、収入印紙で納付することができます。
- 郵便局か法務局で登録免許税分の収入印紙を購入
- 登記申請の際、法務局に収入印紙を提出
収入印紙納付は、郵便局や法務局で収入印紙を購入して手続きを行えますが、金額が3万円以下の場合に限定されています。なお、3万円を超えても対応してくれる法務局もあるので、気になる場合は事前に確認したほうがいいでしょう。
オンライン納付
インターネットバンキング、モバイルバンキング、そしてATMを使ったオンライン納付も可能です。主に次の手順となります。
- 事前に登録免許税のオンライン納付が可能かを金融機関に確認
- 金融機関の指示に従って納付
平日に時間がとれない方が恩恵を受けやすい手続き方法です。なお、オンラインでも登記申請を行うことは可能です。詳しくは下記記事をご参照ください。
登録免許税が軽減される条件
登録免許税が軽減される条件は、次の4種類が考えられます。
- 土地の評価額が100万円以下
- 複数の相続登記を一括申請
- 数次相続の状態で一次相続の相続登記が未了
- 中間省略登記が発生している
土地の評価額が100万円以下
土地の評価額が100万円以下の場合、登録免許税の免税措置を受けられます。なお、登記申請書の登録免許税の記載欄に、「租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税」と記載しなければ免税措置は受けられません。
複数の相続登記を一括申請
被相続人が複数の不動産を所有していた場合、別々に相続登記をする必要があります。しかし、複数の不動産の管轄法務局が同一である場合は一括で手続きが行えます。また、別々で相続登記をするよりも、一度にまとめて手続きする方が登録免許税を軽減できるケースがあります。
例えば、「A土地」「B建物」「C土地」を所有していた被相続人がいるとします。「A土地」の評価額が8万5251円、「B建物」の評価額が9万5222円、「C土地」の評価額が10万212円とします。それぞれ別々に相続登記をすると、「A土地」、「B建物」、「C土地」とも、評価額は100万円以下であるため登録免許税が1000円ずつとなり、合計3000円が登録免許税となります。
一方、3件の不動産を一括で相続登記をすると合算した課税価格は28万円となり、登録免許税は1000円で済むことになります。
数次相続の状態で一次相続の相続登記が未了
数次相続とは、相続人が相続の手続きを行う前に亡くなってしまい、次の相続が発生した状態を指します。このような相続状況の場合、令和7年3月31日までの限定措置ではありますが、一次相続(最初の相続)の相続登記が未了である場合、一次相続分の登録免許税が免除となります。
ただし、この免税措置は土地に限られ、建物には適用されない点に注意が必要です。また、登記申請書の登録免許税の記載欄に「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と記載しなければ免税措置を受けることができないため、申請書を記載する際は十分に確認しましょう。
中間省略登記が発生している
不動産登記は、事実が生じた順番に従い、登記申請をしなければいけないのが大原則です。しかし、数次相続が発生していた場合、一次相続が単独であれば中間省略登記が認められます。そして、この中間省略登記における、一次相続分の登録免許税は免除されます。一次相続が単独となりやすいケースとしては以下のような場合が考えられます。
- 法定相続人が単独
- 遺産分割協議や遺言で、特定の相続人が単独で不動産取得が決まった
登録免許税以外にかかる相続登記の費用
相続登記には、登録免許税以外にも戸籍謄本や住民票などの必要書類の取得費用がかかります。また、登記申請を司法書士に依頼する場合、司法書士報酬も発生します。
必要書類の費用
相続登記には主に以下の関係書類が必要になります。なお、地方自治体によって取得費用が異なる書類がある点には注意しましょう。
書類名 | 取得費 |
---|---|
戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) | 450円 |
除籍謄本(除籍全部事項証明書) | 750円 |
改製原戸籍謄本 | 750円 |
印鑑登録証明書 | 200円~300円 |
住民票・住民票の除票 | |
戸籍の附票 | 300円 |
固定資産評価証明書 | 200円~400円 |
司法書士報酬
司法書士に登記を依頼した場合の報酬相場は、一般的に4万~8万円とされています。司法書士の報酬は自由化されており、統一された標準報酬は存在しません。
ただし、日本司法書士会連合会が令和6年3月に実施したアンケートによれば、全国の司法書士の報酬額はこの価格帯が多いとされています。なお、依頼する相続手続きの内容や複雑さによって報酬が変動することもあるため、これらの情報はあくまで目安として参考にすると良いでしょう。
※参照:報酬アンケート結果(2024年(令和6年)3月実施)|日本司法書士会連合会
登録免許税で不明な点があれば司法書士へ
相続登記は手続きが難しく厄介なものです。相続人の戸籍謄本などの関係書類の収集など専門的な知識がないと手続きがスムーズに進みません。
登録免許税に関しても同様に、課税価格の算出、登録免許税の計算など、どれか一つでも間違えれば法務局から補正(修正)の連絡がきます。もし、登録免許税の支払いや相続登記にお困りなら、どんな小さなことでも当事務所へご相談ください。