持分移転登記とは?かかる費用や手続方法・注意点を詳しく解説

持分移転登記とは?費用や手続方法・流れを詳しく解説_サムネイル

持分移転登記が必要となるケースとは

不動産には単独所有の不動産ばかりではなく、複数人で不動産を共有するケースがあります。これは一般的に持分といわれ、不動産の所有権移転時に持分を移転する場合があります。

この持分を移転する手続きは「持分移転登記」と呼ばれ、不動産の所有権の一部を他者に移転する際に必要です。持分移転登記が求められる主なケースとしては、次の4つが挙げられます。次項では、具体的な例を用いながら各ケースを詳しく解説していきます。

  • 相続
  • 離婚による財産分与
  • 売買・贈与
  • 持分放棄

相続

相続時は登記が義務化されたため、手続きは必須になります。例えば、東京郊外の一戸建てに住む家族の父親が亡くなったとします。法定相続で父親の名義であった土地や家屋を相続登記する際は、母親が持分4分の2、子供2人がそれぞれ持分4分の1の割合で行われました。数年後に亡くなった母親の相続も法定相続として進める場合は、母親の持分4分の2が、4分の1ずつ子供らに移転されます。

この場合は父・母が亡くなったタイミングで持分移転登記手続きを行う必要があります。

離婚による財産分与

とあるマンションに住む夫婦が持分を2分の1ずつ共有してる状態で、離婚することになりました。夫婦の間にはまだ小学生の娘がおり、妻が娘を引き取ることになります。娘の通学する小学校を変えたくないとの事情もあり、妻と娘がこのままマンションに住み続けることになりました。夫婦間の話し合いの結果、夫の持分2分の1を妻に移転することになった場合、財産分与に伴い持分移転登記が必要になります。

贈与・売買

共有者間での持分の贈与や売買でも持分移転登記が必要です。例えば、共有する不動産の一部を他の共有者や第三者に譲渡する場合、この持分移転を正式に登記しなければ、法律上の効力が認められません。特に売買契約の際は、登記手続きが売買を行う上で必須であるケースが多いため、正確な手続きがより強く求められます。

持分放棄

共有不動産の持分所有者は、それぞれの持分を放棄することができ、放棄した持分は、ほかの共有者の持分割合に従って移転します。仮にA、B、Cの持分が以下の通りだったとします。

持分の放棄前

  • A:持分6分の3
  • B:持分6分の2
  • C:持分6分の1

ここでAが持分を放棄すると、Bに6分の2、Cに6分の1の持分がそれぞれ移転します。

持分の放棄後

  • A:持分なし
  • B:持分6分の4
  • C:持分6分の2

以上により、これら持分を移転した分の登記手続きが必要になります。

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持分移転登記手続きの流れ

持分移転登記を進めるためには、必要書類の準備と申請が重要です。手続きにはいくつかのステップがあり、正確に申請することが求められます。

必要書類の準備

自分で持分移転登記を申請する場合は、主に以下の6点の書類が必要です。なお、持分移転の原因が売却や離婚、相続などケースによって追加で書類を準備する必要があります。

  • 登記申請書
  • 登記原因証明情報
  • 登記済証もしくは登記識別情報
  • 印鑑登録証明書(持分を譲渡する人)
  • 住民票もしくは戸籍の附票(持分を取得する人)
  • 固定資産評価証明書
  • 委任状(手続きを委託した場合)

登記申請書

登記内容を記載した登記申請書を作成します。パソコンで作成しても手書きでも構いません。ただし、手書きの場合は鉛筆や消せるボールペンは使用できませんので注意しましょう。登記申請書の具体的な記載事項は以下の通りです。

  • 【登記申請者の氏名・住所】持分の譲渡者・取得者の住所氏名
  • 【登記の目的】〇〇持分全部移転※1
  • 【登記原因】令和〇年〇〇月〇〇日相続と記載※2
  • 【登記権利者の住所氏名】持分取得者の住所と氏名※3
  • 【添付情報】登記原因証明情報など申請書など提出する書類名
  • 【課税価格】登録免許税を算出するための金額
  • 【登録免許税】課税価格に対し贈与や売買は2%、相続は0.4%をかけた金額

※1:この「〇〇」には持分を渡す人の名前が入ります。また、移転が持分の一部である場合は「〇〇持分一部移転」と記載
※2:贈与や売買の場合はこれら文言に差し替え
※3氏名の前に取得する持分「持分〇分の〇」と記載

登記原因証明情報

登記の原因となった事項を証明する書類です。必要書類一覧と同様に、登記原因ごとに用意する書類は異なるため、注意しましょう。

登記原因 必要な書類
売買 売買契約書および領収書
贈与 贈与契約書
相続 遺産分割協議書、遺言書など
離婚による財産分与 調停調書など

登記済証もしくは登記識別情報

持分を譲渡する者の登記申請意思を担保するために提出します。登記済証とは俗にいう権利証のことです。平成17年3月17日以降、登記済証は登記識別情報というものに変更になりました。登記識別情報はアルファベットや数字からなる12桁の羅列で、いわばパスワードのようなものと思ってください。

印鑑登録証明書

持分を譲渡する本人であることを証明するために提出します。発行期限があり、登記申請前3か月以内に作成したものでなければいけません。

住民票もしくは戸籍の附票

登記にあたって持分取得者の住所氏名を確認するために必要です。印鑑登録証明書と違って期限の制限はありませんが、円滑に所有者情報を確定させるためにも、なるべく最新のものを準備しましょう。

固定資産評価証明書

課税価格を算出するために提出します。東京23区では都税事務所、それ以外の地域においては各市区町村役場で取得できます。年度によって評価額が変わる可能性があるので、最新年度のものを提出しましょう。

委任状

前述した書類は、あくまでご自身で登記申請する場合に必要なものです。司法書士などに登記申請を委任する場合には、委任状が必要になります。

管轄法務局への登記申請

必要書類が準備できたら管轄法務局に登記申請しましょう。登記の管轄は不動産の所在地によって決められており、詳しくは法務局公式サイトで確認できます。登記完了までは通常1~2週間かかりますが、法務局の業務の状況によってはそれ以上の期間になってしまうこともあります。

登記完了書類の受領

登記が完了すると、法務局から登記完了書と登記識別情報を受領することになります。受け取り方法は登記申請時に、窓口、郵送、オンラインのいずれかから選ぶことができます。

手続にかかる費用と課税

手続にかかる費用と課税_イメージ

持分移転登記には、申請に伴う費用や課税が発生します。主な費用には、登録免許税や手続きを依頼する場合の司法書士報酬が含まれます。費用は不動産の評価額によって異なり、課税についても移転方法によって変わります。以下では、具体的な費用と税金に関する情報を解説します。

必要書類の収集費

以下は持分移転登記で必要になりやすい書類にかかる費用です。住民票や固定資産評価証明書などは、各自治体によって手数料の額が変わります。気になる方は事前に各役所に手数料の額を確認した方がよいでしょう。

書類名 1通あたりの手数料
戸籍謄本 450円~750円
住民票もしくは戸籍の附票 300円~400円
印鑑登録証明書 300円~450円
固定資産評価証明書 300円~400円
調停調書の謄本 150円
判決書正本(確定証明書付) 150円

登録免許税

登録免許税とは、登記申請の際に国に納める税金です。固定資産評価証明書の評価額に所定の税率を乗じたもので算出できます。税率は大まかに相続とそれ以外に分かれます。

  • 相続の場合:固定資産評価額×移転する持分割合×0.4%
  • 相続以外の場合:固定資産評価額×移転する持分割合×2%

司法書士報酬

司法書士報酬は、司法書士に手続きを委任する際に生じるものです。現在、司法書士報酬は自由化されて決った価格は存在しません。おおよそ3万円~12万円が相場だとされています。もし、少しでも報酬を安くしたいと考えている場合は、書類収集など自分で行えるものに手を付けた上で依頼するとよいでしょう。手続き内容によっては司法書士報酬が減額され、結果として節約になることがあります。

持分移転登記後の固定資産税と贈与税

固定資産税の課税対象となるのは、その年の1月1日時点の所有者です。つまり、持分移転登記が年をまたぎ、1月1日時点の所有者が登記上変わらない場合は,前所有者に課税されることになってしまいます。持分移転登記を行う場合は、年を跨がないように注意しましょう。

また、持分の贈与や放棄がなされた場合は、どちらのケースでもその翌年に贈与税が課されます。異なるのは、贈与や放棄後の不動産を売却する場合です。贈与の場合は、その取得費を売却価格から全額控除できるのに対して、持分放棄の場合は取得費の5%しか売却価格から控除できません。

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持分移転登記と共有不動産の注意点

持分移転登記を行う際には、共有不動産特有の注意点があります。特に売買や贈与などの行為は、ほかの共有者に影響を及ぼしやすい傾向があります。将来的なトラブルを避けるためにも、以下のポイントを覚えておきましょう。

共有不動産には制約がある

共有不動産に対して何らかの行為を行う場合、用途に応じて制約が設けられており、これらは主に共有者間の利益の調整や紛争の防止を目的としています。以下の一覧表では、共有に関する具体的な制約事項や手続きについて詳しく説明していますので、ご参照ください。

行為 条件
建物の簡単な修繕 単独でできる
賃貸借契約の解除 共有物の過半数の同意が必要
共有物の売却 共有者全員の同意が必要

一般的には賃貸契約売却を行う場合、共有者の数に比例して、手続きの煩雑さが増加する傾向にあります。持分の移転などを行う場合は、これらの制約が発生する点も視野に入れながら手続きを進めるようにしましょう。

手続きを放置していた共有持分

共有不動産で共有者が増えるケースとして考えられるのが、主に相続になります。例えば、一次相続における相続人がA、B、Cの3人であった場合、相続登記を放置したまま、Aが亡くなってしまうと、Aの相続人のD、Eが2次相続することになります。

結果として、一次相続での共有者はA、B、Cの3名だったのがB、C、D、Eと4名になってしまい、一次相続と比べると手続きが煩雑化します。一般的には放置する期間に比例して手続きに関係する人数が雪だるま式に増える傾向があります。

そのため、持分移転が決まったタイミングで手続きを行いましょう。もし、すでに共有者が大きく膨らんでしまった場合は、司法書士などへ相談することをお勧めします。

第三者が加わる売却や贈与

持分そのものを売買したり、贈与することは、法律上認められています。これは、共有者が自己の持分を自由に処分できる権利を持っているためです。しかし、持分の売買や贈与を行う際には注意が必要です。なぜなら、その取引によって、全く関係のない第三者が新たな共有者として加わる可能性が生じるからです。これにより、共有者間の意思決定が複雑化したり、共有物の利用や管理において意見の対立が発生するリスクが高まることがあります。

そのため、第三者に売却や贈与を行う際は、ほかの共有持分所有者に事前に相談するなど、持分に関する情報共有が必要になってくるでしょう。

持分移転登記の手続きなら司法書士へ!

持分移転登記にはさまざまなケースがあり、それぞれの事例に応じて手続き内容や要件が異なります。これらの登記手続きでは、法的要件を確実に満たすことが求められ、記載内容に誤りがあると、後々の法的トラブルや追加手続きが必要になるリスクがあります。

こうした複雑な状況に直面した際、専門知識が求められる部分も多く、誤りが起きやすいため、司法書士や専門家への相談が非常に有益です。専門家に依頼することで、手続きがスムーズに進み、将来的なトラブルを未然に防ぐことができるため、不明点やお悩みがあれば、ぜひ当事務所までお気軽にご連絡ください。

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記事の監修者

司法書士法人わかば 境 光夫

司法書士法人わかば
代表司法書士 境 光夫

昭和35年2月9日東京都杉並区生まれ。専修大学法学部卒業。
平成24年に司法書士試験に合格。その後、司法書士事務所(法人)にて登記業務や債務整理業務を取り扱う。
司法書士法人わかばを立ち上げ、相続登記(不動産の名義変更)を中心に業務を行う。

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